ニラベルトの生活史

生活のアーカイブ

「マイ・ブロークン・マリコ」を読んだ

ガラの悪いOLが営業外回り中に入った定食屋のテレビで、1週間前にも会っていた親友のマリコが薬物で自殺したニュースを目にする。DV父のもとから遺骨を奪い、遺骨とともに海を目指して旅に出る。

 

あっと言う間に読み終わった。読んだというか読まされた。首根っこ掴まれ、地面に押し倒されて、一方的にボコボコにされた。感情的をむき出しにする主人公に暑苦しさは一切なく、その感情の動きに目を見張るしかない。感情は掻き回されるけど、読んだあとはなぜか爽やか。上手く言語化できないし、しなくてもいいと思うけど印象に残ったシーンを思い出して書いていく。

 

DV父の新しい妻が良い人だった。「この人がもう少し早く再婚していればマリコは死ななくてすんだかも」と思う主人公。実際にそうだとしたら本当に救われていたのか。娘が生きている状況だったら父は再婚という選択肢をしていなかったのか。しっかり父を怒る妻。主人公の忘れた靴、マリコの遺言を届ける妻。なんでこの夫妻が繋がったんだろう。それはマリコが死ぬ前?後?どっちから?

 

遺骨を奪われて泣く父。どんな気持ちなんだろう。我が娘を死へ追い込んだことへの後悔と罪の意識か、所有物を奪われたことへの怒りか。愛はもとからあったのか、それとも自分を愛するためのDVの吐口としか考えてなかったのか。マリコが死んだ後それに自覚したのか。

 

主人公はマリコとの思い出を反芻しながら旅に出る。印象的だったのは最初はいい思い出が思い出され、その後に「面倒くさいやつだったなぁ」と思い出す。マリコからの手紙には思い出として楽しいこと。思い出す会話は苦しかったこと。どんどんマリコとの思い出を忘れちまうと苦悩する主人公。

 

自分をとりあえず大切にしろ、と髭男。マリコはそれに対し自分で自分を大切にできなかった人。父、彼氏からの暴力、親友である主人公にはリストカットするところを見せ、「あなたに彼氏ができたら私は死ぬ。私を愛さなくなったら死ぬ。」と告げる。愛を受けることに依存してしまった。負の連鎖。主人公は「なんで一緒に死のうって言ってくれなかったんだ」と置いていかれた思い。

 

ラストシーンのマリコからの手紙には何が書かれていたんだろう。

 

面白かった。もう一回読みたい。

巻末の短編もすごい良かった。