ニラベルトの生活史

生活のアーカイブ

「宇宙よりも遠い場所」を観た

女子高生4人が南極大陸を目指す物語。

めちゃくちゃ面白かった。

絵柄も綺麗で、構成も丁寧。キャラも可愛い。キラキラした青春を友情を描いていると思いきや、個人的に生々しい人間らしさも描かれている気がする。1話は素晴らしくて、2話以降の前半はやや失速するも、南極に着いてから物語の重圧さを感じた。ラストも綺麗で意外で素晴らしかった。

 

4人ともキャラがいい。完璧な人がいない。むしろ欠陥が目立つ。そこがまた愛らしくて、パワーを感じる。強いて言うならしらせが好きだけど…みんな好きだ。

 

きまりと親友の別れのシーン。きまりが南極に行くと言い出してから不穏な表情を見せる親友。きまりにとってお姉さんのような幼なじみの親友で、とてもしっかり者。きまりが何か迷うと親友が世話を焼いてくれた。そんな親友は、きまりの世話をすることに自己価値を抱いていたので、いざきまりが自分で「南極へ行く」と決めてから、自分の価値を見出せなくなり、きまりに影で攻撃していた。そんな自分に自己嫌悪を抱いて、きまりの旅立ちの日に「絶交」を切り出すも、きまりはそれを咎めずハグをし前へすすんでいく。これがラストシーンに繋がるのだが…。このシーンがめっちゃ好き。第一部のハイライト。この親友の気持ちすごいわかる。結局どうすれば自分が満たされるのかって待っているだけではなく、自分で主人公のように歩み出すしかない。そんなやり場のない無力感と青春の可能性があふれる素晴らしシーン。

 

タイでのひなたパスポート紛失事件。ひなたはいつも明るいけど、みんなのために自己犠牲に走る傾向がある。そんなひなたを見ているとけっこう苦しい。私はそんなひなたと「自分のためになりふり構わない」しらせとのやりとりが終始好きだ。しらせがこの問題を解決しようと大金を払ったのだが、結局はしらせがひなたのパスポートを持っていたと言うギャグのバランスも良かった。

 

ひなたは友達だと思っていた同級生から裏切られ、人間不信となり退学となった。地元の人たちと南極からテレビ電話で中継するイベントで、その同級生がおそらく南極にいる話題性のためにやってきた。なんでお前らきてんだよ…動揺しその場から逃げ出したひなた。みんなは心配するも平気だも笑顔を作るひなた。しかし外で怒りをぶつけるひなたをしらせは目撃。ひなたは「許せない私が悪いんだよ」と自分を責めるも「なにがあったか教えて。あなたは悪くない」とメッセージを送り続けるしらせ。このエピソードの最後に再び日本と中継するシーンで、ひなたの同級生に対して檄を飛ばすしらせが最高にカッコいい。

「ひなたを傷つけたのにのこのこやってきてんじゃねぇ。ひなたの受けた傷のことを知らないくせに。しかしお前らもこのことを一生引きずって生きていくんだよざまぁみろ。(こんな感じだったような)」

このシーン、なにがいいかって言うとひなたの同級生の姿を一切写していないところだ。視聴者もおそらくその人たちの悔しい顔とか悲しい顔とか見たくないと思う。そのしらせの気持ちに対し、仲間たちはどう思っているのか。そこを削ぎ落としたの本当にすごい。

 

説明不要の最終話。最高です。しらせは南極に着いたけど、いまいち感動を感じていなかった。ずっと感じていた母の死の無実感、これを南極に辿りつけば答えは出ると思っていたしらせ。そんな中、しらせの母が死んだとされるポイントまで進んでいく。そこの基地で発見した母の遺物、ノートパソコン。基地に帰り、仲間が部屋にしらせ1人にしてもらいそれを開くと、母が行方不明になってから送り続けたしらせからのメールが大量に届き始める。しらせのメールは1度も読まれてなかったことを知り、母の死を実感し嗚咽する。部屋の外でその嗚咽を聞いていた仲間たちも同じように悲しんでいる。本当に一緒にここまで旅をしてきて良かったね…。最後は吹っ切れてスッキリした表情のしらせ。仲間の支えと自分の力で親の死を乗り越えた。そして帰りの船のオーロラのシーン。「私たちなんか強くなったよね。という雑になった。」

 

空港から一緒に帰らないというのもいい。私たちはもうつながっている。平仮名一文字でも分かり合える。

 

日本に帰ったことをきまりが親友に報告し「ざまぁみろ」と返信。添付された画像には北極でオーロラを見ている画像。また誰かが自分の足で一歩歩み始めた。