ニラベルトの生活史

生活のアーカイブ

村上春樹「羊をめぐる冒険」を読んだ

読むのに2週間かかった。

ストーリーとしては緩急がなくぼんやりしているし、女とセックスばかりしているし、なんかキザだし「きついわ…」と思いながら読んでいたけど、徐々に世界観にハマっていった。

まずはハードボイルドな世界観と青春。タバコとビールとブランデーとコーヒーと小説が良く出てくるんだけど、70年代の煙臭い退廃的な世界観が個人的に好き。あとは会話のテンポと説明しすぎないのも印象的。「そうだね」「かもしれない」「そうともいうし、そうじゃないともいえる」などとなんか核心に触れない会話。もっと突っ込んで聞けよ!驚けよ!この状況は何なのか教えてくれよ!ってなってたけど、徐々にその空気感にも慣れていった。余白を読みながら読むのが楽しくなっていった。

物語が進むにつれ徐々に主人公は孤独になっていく。何もかもを失っていく。最初は妻、そして仕事、友人、住まい、耳が美しい彼女、そして生きる意味。北海道の奥地の友人の別荘で、徐々に世界から切り離されていく。そんな中、自分らしさすら意味をなさなくなっていく。鏡をみても、本当の実態は鏡の中で、その実態に操られているのではないかと。そんな中、死んだ友人のネズミがある答えを突きつける。「俺は俺の弱さが好きなんだよ。」 

 

いやーなんか面白かった。村上春樹作品ハマりそう。最近は漫画で「約束のネバーランド」を読んだけど、いや比べるものではないけど、説明されすぎないっていうのは脳に良い刺激になるなぁと思った。余白は世界観に広がりを与えるのだなと。